電車の中で

海へ向かう電車だったのだけど、途中から幼稚園くらいの子ども二人を連れた父親と母親(らしき人)が乗ってきて私の側へ座り、たぶん年長の方の子が窓の外を見ようと必死に靴を脱いでいる。その子は靴を脱ぐことに必死なのに、隣のたぶん他人のお婆さんは「いくつ?」「かわいいーねー」などと暢気に話しかけてその子の手を取ったりして、靴を脱ぐ邪魔ばかりして、あーあーとか思ってたらその父親がめっちゃ笑顔で子どもに向かって指を三本立てて、それを確認したのか「みっつ」とそのお婆さんに子どもが答えて、で、私はと言えば不採用通知をもらったばかりの傷心の身だったこともあってか、それともちょうど聴いていたくるり『図鑑』のせいなのか、それとも住宅地と広い空き地がコラボレートしてる車窓の景色のせいなのか、たぶんそのぜんぶのせいで眼前に飛び込んできたその微笑ましい、微笑ましく感じるのがありがちだなと思うくらいよく見かけそうな風景に、けっこう泣きそうになって、でもそのあと少しだけ幸せになった。