堀江敏幸

『郊外へ』『熊の敷石』『雪沼とその周辺』を古本屋で購入。『雪沼とその周辺』を半分くらい読んだところなんだけど、この連作短編集に触れて宮本輝『夢見通りの人びと』とか吉村昭『法師蝉』をまず想起した。それは単純に、あ市井の人々の日常とか似てるなーって思ったからだったんだけど、でも作品が孕む志向性は優劣の問題ではなく全然異なっていて、まあ堀江の場合雪沼という場所が「周辺」であるということが重要なポイントになってきているのだと思う。まだ全部読んでいないのであまり偉そうなことは言えないのだけど。
あ、あと朝倉祐弥『白の咆哮』を読んだけど、こっちは文章から星野智幸『ロンリー・ハーツ・キラー』、構造から映画『もののけ姫』を思い出した。あと愚にもつかないんだけど、やっぱオウム。上手く言えないけど、そういうふうに現実との接点を想起させてしまう妙な圧迫感があって、それは決して面白味というよりもむしろ不快感に近いんだけど、そのことと矛盾するようにこの小説はそれなりに面白い。それはたとえば近未来SFの形を取りながら現代批評を試みる小説は雑多にあるしかつてあって、この作品もそれら作品群から突出するほど有効なブッキッシュ批評としては成功していないんだけど、前にアルジェリア独立闘争のドキュメンタリーか何かを観ていて蜂起してる民衆の声がもはや人間の怒号とは思えないような甲高さだったのを私は覚えていて、作中で「日本」を駆け抜けていく〈土踊り〉なるものの人々の熱狂が、つまり「咆哮」が同じような「不気味さ」へ酷く想像力をかきたてるものだったのだと、そういうことなのだと思う。