泣きそうになる

地元のよく行っていた小さな呑み屋が、大手居酒屋チェーン店の経営参入をきっかけにしばらく改装休業していたのだけど、こないだ見に行ったらすっかり店内が様変わりしていてびっくりした。前は焼酎とワインがやたら揃っているというおかしな店だったんだけど、全然普通のメニューになってたり、目に痛くもいい風情を醸し出していたオレンジ色の間接照明がパープルのアダルトな雰囲気をいやらしく演出するいけ好かないものになってたり、でも一番ショックだったのは無愛想なマスターやテンションの高いスキンヘッドの店員さんがみんないなくなってたことだった。別に仲良かったわけではないけれど、これには本当に衝撃を受けた。悲しいのか切ないのか、とにかくやりきれない気持ちでいっぱいになった。
最近よくこういう気持ちになることがある。
実家の近所の、もう何十年も前から建っててついこないだ壊された家が、実は建築法か何かの法律に違反してたらしく、要するにそのせいで道路の幅が狭くって、その奥に建てた何軒かの新築住宅に買い手がまったくつかなかったため、その家にひとりで住んでたお婆さんが町側から立ち退きを迫られていたと、あとから聞かされたときもそうだった。
別に街が様変わりしていくことを辛く感じたりはしないけれど、ただこんなふうにあまりに理不尽な形で、私の周囲からかつてそこにあったものが損なわれていくことを、とてもやり切れなく思う。この気持ちを感傷とかに回収させてしまうのはとても簡単なことで、そしてラクチンなことでと、そう抑制をかける自分というのは確かにいて、かつその抑制をかける自分に私は肯きもするのだけど、でもやはりとてもやり切れなくて、そのことを思い出すたびにとても泣きそうになる。